眼瞼痙攣・片側顔面痙攣とは
眼瞼痙攣とは、目の周りの筋肉が自分の意思に関係なく痙攣し、まぶたが閉じてしまうことをいいます。進行はゆっくりですが、自然に治ることは稀で、放置すると重症化し、目を開けることが困難になる場合があります。原因はわかっていませんが、向精神病薬や睡眠薬の長期内服が誘因になることがあります。
片側顔面痙攣とは、顔の片側の筋肉が、自分の意思とは関係なく痙攣してしまうことをいいます。
最初は片目の周りの痙攣が起こることが多く、徐々に頬や口の周りなどに痙攣の範囲が広がります。痙攣の程度が強くなると、顔がつっぱってゆがんだ状態になったり、痙攣の側に筋肉の麻痺が生じたりします。また、痙攣の頻度は、最初は緊張したときなどにときどき起こるだけのことが多いのですが、次第に長くなり、日常的に起こるようになることもあります。原因はわかっていませんが、顔面神経の圧迫や顔面神経麻痺の後遺症として起こることがあります。
眼瞼痙攣の症状
眼瞼痙攣の初期症状は、まぶたに不快感を覚える、まぶしく感じる、まばたきが多くなる、などが挙げられます。症状が進行すると、まぶたが頻繁に痙攣し始め、目をうまく開けられずに歩行が困難になるなど、生活に支障が出るようになります。さらに進行すると自分の力ではまぶたを開閉することができなくなることがあります。
症状の進行はゆるやかですが、自然治癒する可能性は極めて低いです。精神面の緊張の影響とも関係があるとされており、普段は重い症状があるのに、診察室では痙攣が治まるという例も見られます。 また、眼瞼痙攣は一般的に両目に発症しますが、左右差があることもあります。
片側顔面痙攣の症状
初期症状では、左右どちらかの目の上まぶたか、下まぶたが痙攣するようになります。そして進行すると、同じ側の目の周辺にある他の筋肉や、口の周りの筋肉も痙攣を起こすなど、範囲が拡大していきます。重症化すると、慢性的に痙攣を起こすようになります。なお、痙攣は就寝中でも継続します。
眼瞼痙攣・片側顔面痙攣に
似ている疾患
眼精疲労
眼精疲労とは、一般的に疲れ目が病的な状態になったものを指します。
チック
チックとは、小児や青年期に多く、体の一部分が自分の意思とは無関係に動いてしまう症状です。顔に発症すると、まばたきが多くなることもあります。精神面が発症の原因に関与していると言われています。なお、一時的であれば、我慢すれば症状を抑制することもできます。
眼瞼ミオキミア
眼瞼ミオキミアとは、疲労が蓄積した時などに、まぶたの一部がピクピクと痙攣を起こす症状です。疲労は肉体的なものだけでなく、精神的なストレスでも誘発しやすく、またコーヒーを飲むだけでも症状が強く出る場合があります。あまり聞きなれない病名ですが、眼瞼痙攣とは異なり、通常では数日~数週間で自然に治まることが多いです。
ドライアイ
ドライアイは、涙の量が減ることで慢性的に目が乾いた状態です。初期症状では目に痛みを感じる・異物感がある程度ですが、重症化すると角膜や結膜を損傷する恐れもあります。涙は、目の乾燥を防ぐ・目に入った異物を洗い流すという働きの他にも、目の殺菌作用も担っていることから、涙の量が減ると角膜炎や結膜炎を発症しやすくなります。近年、ドライアイはパソコンのモニターを長時間見続ける習慣のある人に多く発症し、注目されています。
自立神経失調症
身体の働きを一定に保つ役割を担っている神経を自律神経といいます。自律神経は交感神経と副交感神経からなり、呼吸や心拍数、血圧、体温など生命維持活動を適切に保つよう調節しています。
この交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、疲労感や頭痛、めまい、肩こり、便秘、下痢、食欲不振、息切れ、動悸、異常発汗など、身体にさまざまな異常が現れます。また、目の周りや顔の筋肉に不快感が現れることもあります。
開瞼失効(開眼先行)
開瞼失効(開眼先行)とは、上のまぶたを持ち上げる筋肉が自由に動かせなくなり、まぶたを開閉することができなくなる疾患です。眼瞼痙攣と同様に、脳内の運動をつかさどる機能が障害を起こすことが原因と言われています。
重症筋無力症
重症筋無力症とは、神経から筋肉への情報伝達に障害が起きることで、筋肉が麻痺する疾患です。目に症状が現れると、まぶたが下がってしまう眼瞼下垂を引き起こしたり、目を動かすことが困難になったりします。
うつ病・うつ状態
うつ病やうつ状態とは、明確な理由もなく気分が落ち込み、無気力になる症状です。誰もが大切な人を失えば深い悲しみを覚え、無気力状態になるものです。しかし、うつ病の場合は、それらとは異なり、理由もなく自分が無価値な存在だと感じたり、自責の念にかられて気分が落ち込み、無気力になったりします。また、通常の落ち込みよりも症状が重く、長いという特徴もあります。身体的には、不眠状態になったり、食欲不振に陥ることもあります。場合によっては、目の周りや顔の筋肉に不快感が現れることもあります。うつ病やうつ状態は、薬によって症状を軽減・改善することができます。
眼瞼痙攣・片側顔面痙攣の治療
眼瞼痙攣や片側顔面痙攣の治療には、ボトックス注射が有効です。ボトックス注射は現在ではシワ取りなどの美容医療での活用が有名ですが、もともとは眼瞼痙攣などの治療薬として登場したもので、現在も最も一般的な眼瞼痙攣と片側顔面痙攣の治療として用いられています。なお、眼瞼痙攣と片側顔面痙攣の治療を目的としたボトックス注射は健康保険の適用範囲内となっております。
ボトックスは筋肉の緊張を和らげる効果があります。そのため、痙攣を起こしている筋肉にボトックス注射をすると、痙攣の症状を抑制することができます。ただし、即効性はなく、時間とともに少しずつ効果が現れてきます。一般的な目安は、治療後数日で効果が現れはじめ、3~4か月間は効果が持続します。効果が薄れてきたら再度ボトックス注射を受けるとよいでしょう。なお、ボトックス注射は外来で受けることができます。
ボトックス注射の
安全性・副作用
ボトックス治療の副作用として考えられているのは、注射した筋肉の力が弱くなり過ぎることで、まぶたを完全に閉じるのが難しくなることなどです。また、痙攣を止めたい部分以外にも作用が拡大してしまうと、まぶたが開けにくくなる、ものが二重に見える、不自然な表情になってしまうなどの問題が生じる可能性があります。ただし、副作用は、ボトックスの効果が薄れていくにつれて、徐々に解消されていきます。
治療の注意点
注射液の成分が必要な範囲以外にまで拡大してしまうと、正常な筋肉の動きまで抑制してしまい、不自然な表情になってしまうなどの問題が生じる可能性があります。そのため、下記のことにご注意ください。
治療当日
治療当日は、注射する部位にできるだけ触れないようにしましょう。
洗顔は可能ですが顔を強くこすったり、マッサージなどはしないでください。