ガングリオンとは
ガングリオンは、一見腫瘍と間違えられますが、関節付近にできるゼリー状の物質が詰まった袋状の腫瘤で、腫瘍ではありません。
ガングリオンは手の甲側に生じることが多いですが、手のひらや手首関節周辺にできることもあり、稀に手以外の関節に発症することもあります。手以外では比較的足や足首に発症することが多いです。大きさは米粒のように小さなものから、ピンポン球ほど大きくなるものまでさまざまで、硬さも柔らかいものから硬いものまでさまざまです。
ガングリオンの原因
ガングリオンができる明確な原因はまだはっきりとわかっていません。メカニズムとしては、滑液が何らかの原因で袋の内部に詰まり、時間とともに濃縮されてゼリー状になったものと考えられています。ガングリオンが手の指のつけ根の腱鞘や関節の周辺に発症しやすい一般的な理由は、ガングリオンが関節包や腱鞘と繋がっているためです。男性より女性に多く見られます。また、普段手を使う頻度との関連性は見られません。
ガングリオンの症状
ガングリオンの大きさは米粒大からピンポン玉大までとさまざまあり、ほとんどは痛みなどの自覚症状はありません。ただし、神経の周辺に発症したり、関節の動作を阻害する場合には、痛みや痺れ、運動障害、感覚障害などを引き起こすこともあります。
大きくなったり、小さくなったり、消えたと思ったらまた再発したりすることがあります。
指の関節付近に生じた場合
ガングリオンが指の関節付近に発症した場合には、指を広げにくいなどの障害が発生します。また、稀に手が痺れたり、手の力が入らないなどの症状を起こすこともあると言われています。
膝の関節に生じた場合
ガングリオンが膝の関節付近に発症した場合は、膝痛を起こすことがあります。
くるぶし付近に生じた場合
くるぶし付近にできたガングリオンは、特に痛みを強く発症します。状態によっては歩行や正座が困難になる場合もあります。
ガングリオンの診断
ガングリオンは粉瘤や脂肪腫、その他の腫瘤と一見似ているため、しっかりと触診や超音波検査などを行い、ガングリオンかどうかの判断を行う必要があります。
皮膚上にはっきりと腫瘤が確認できる場合は、注射器を刺して腫瘤内の内容物を吸い出して調べます。内容物がゼリー状のものであればガングリオンと診断できます。
ガングリオンの治療
穿刺吸引療法
ガングリオンの治療は、古くから同じ方法が取られています。最も長く行われている治療法は、注射針による穿刺吸引療法です。吸引は、一般的に嚢胞の中から流体を除去し、瘢痕形成を促進する目的で行われます。しかし、この方法を複数回繰り返しても、ガングリオンが完治する可能性は30~50%程しかありません。
このように、穿刺吸引療法での再発率は高いですが、痛みが増したり、局所皮膚感染症を引き起こしたりするリスクは低いです。また、穿刺吸引療法は通常画像検査なしで行われますが、超音波検査を組み合わせると、より正確な治療が可能です。
穿刺後の圧迫や内容物の産生を抑制する目的でステロイドの嚢胞内注入を併用することがあります。
外科的治療
穿刺吸引療法のような長年行われてきた治療がうまくいかなかった場合は、外科手術による切除が推奨されることがあります。外科的切除は、通常外来で行われます。手、首、足、背中にできたガングリオンの手術は、ガングリオンのすぐ上を横切開します。その際、ガングリオンの被膜や被膜の付着物、靭帯を傷つけることなく、可能な限り靱帯の近辺を慎重に切除することが大切です。もしガングリオンの一部を取り除けずに残してしまうと、その後の再発率の高くなりますので、手術では全て取り除くよう心がけます。実際に、外科的切除は、穿刺吸引と比較して再発率が低いというデータがありますが、それでも7~43%は再発しているというデータもあり、切除方法や切除の取り残しが再発の原因となっている可能性が高いとされています。
このように、外科的切除はとても効果的なガングリオン治療法となりますが、デメリットとしては、穿刺吸引療法と比べて、感染症、神経損傷、肥厚性瘢痕、神経異常、血管損傷、痛みの増加などのリスクを伴うことが挙げられます。