副耳
副耳は、耳の前部や頬にいぼ状の突起ができる先天性の疾患です。片側の耳前部に1個だけできることが多いですが、時には両側にできる場合や複数個できる場合もあります。また、いぼ状ではなく、ヘソのように凹んだ形状のものもあります。1.5%の割合で発症すると言われ、比較的発症頻は高い疾患です。中には遺伝によるものもあります。
副耳は皮膚のみではなく軟骨も含んで構成されることもあり、耳に近い部位でできる場合には、副耳と耳の軟骨同士が深部で接続されていることもあります。
一方、生まれつき首にも副耳と似た形状の突起ができることもあり、首にできた場合は頸耳(けいじ)と呼ばれます。
副耳の治療
結紮法
結紮法(けっさつほう)とは、副耳の根元をナイロン糸で縛ることで血液が流れないようにし、福耳を壊死させる方法です。結紮(糸で縛ること)から2週間程で自然に取れます。
軟骨のない小さいものは細い副耳に有効な方法です。
結紮する時にだけ一瞬痛みを感じますが、麻酔をするほどではありません。また、生後まもない赤ちゃんにでも実施できる方法です。
切除より傷あとが目立ったり、隆起が残存したりすることがあります。
切除法
軟骨がある副耳の場合は、結紮法では全て取り除くことができないため、その時は切除手術を行います。
小学校高学年以降では局所麻酔で行うことができます。
小さなお子様の場合は全身麻酔が必要なため、連携医療施設にご紹介いたします。
耳瘻孔
耳瘻孔(じろうこう)とは、生まれつき耳の周囲に小さな穴がある状態です。耳瘻孔の下方には管(または袋状)があり、その管の先端は耳介軟骨になっています。これは胎児の時に耳が形成される過程で異常が起きて生じるもので、耳の異常の中では非常に発症頻度の高い疾患の一つで、遺伝性によるものもあります。
耳瘻孔があると、そこからチーズのような臭いのある分泌物が出ることがあります。単にこの状態が生涯続くだけのこともありますが、中には耳瘻孔から細菌が侵入して感染を繰り返す場合もあります。一度感染すると、膿が溜まって腫瘍化するため、その部分を切開して膿を出す、化膿止めのための抗生物質を服用するなどの治療が必要になります。慢性化すると、耳前部や耳後部が膿瘍(不良肉芽)化することもあります。また、耳瘻孔のある側の顔面に感染が広がり、顔面が腫れることもあります。
耳瘻孔の治療
感染している場合
耳瘻孔に感染が確認された場合、膿が溜まった部分を小さく切開し、膿を出します。また、化膿止めのための抗生物質の内服薬も処方します。その後、通院や自宅処置を行いながら、炎症を治めていきます。
感染していない場合
耳瘻孔に感染が確認されない場合は、耳瘻孔の周囲の皮膚ごと中の袋を摘出します。手術の際は、袋の取り残しが無いように事前に袋の内部に色素を注入し、その色素が漏れないように注意深く袋全体を丸ごと摘出します。小さいお子さんの場合は手術の際に全身麻酔が必要になりますが、それ以上の年齢の方は局所麻酔で手術を行うことも可能です。なお、全身麻酔が必要なお子様の手術の際には、当院が連携する高度医療機関へご紹介いたします。
立ち耳
立ち耳とは、正面から見た時、耳が顔に横に張り出した状態です。それにより、正面から見ると耳が大きく見えます。立ち耳は、対耳輪という耳の軟骨の折れ曲がりの弱いことが原因で、それにより耳を頭側へ寝かせる力が働かずに、前を向いてしまいます。立ち耳になると、眼鏡がかけられないなど日常生活に支障をきたす場合があるため、手術によって治療します。なお、立ち耳の治療は保険適応になります。
立ち耳の治療
手術
立ち耳の手術では、耳介後面を切開して、耳介軟骨の後ろ側に矯正しやすいように切り込みを入れます。
その後、耳介軟骨の数カ所に縫合糸をかけて軟骨を矯正し、対耳輪を正常な状態に形成します。これにより耳介全体が後方へ倒れます。
縫合は耳介後面のみですので、傷あとはほとんど目立ちません。